はじめに|相場ではなく「前提」が変わっている
最近、ゴールドとシルバーの価格上昇が続いています。
この動きを
「インフレだから」「投資マネーが入っているから」
と説明するのは簡単ですが、それでは本質を見誤ります。
いま起きているのは、
価格の変動ではなく、通貨と信用の前提が揺らいでいることです。
ゴールドとシルバーが選ばれている理由は、
儲かりそうだから
ではなく
お金そのものが信じにくくなっているから
この一点に集約されます。
1. 実質金利がマイナスな限り、お金の価値は下がる
通貨の価値を考えるうえで重要なのは、名目金利ではありません。
実質金利です。
実質金利 = 名目金利 − インフレ率
この実質金利がマイナスの間、
- 現金
- 預金
- 国債
は、保有しているだけで購買力が落ちていきます。
これは理屈ではなく、
多くの人が日常生活で体感しているはずです。
2. ドルは「強い通貨」に見えて、実質では守れていない
ドルは高金利通貨として扱われていますが、
インフレが完全に収まらない限り、
実質金利は安定してプラスになりません。
つまり、
- 金利は高い
- でも物価も高い
結果として、
ドルを持っていても、価値が守られているとは言い切れない
この違和感が、
「通貨以外の価値」への回帰を生んでいます。
3. 日本円は、より分かりやすく信認が揺らいでいる
日本では、この問題がさらに顕著です。
- インフレ率は上昇
- 金利は上げにくい
- 実質金利は深いマイナス
この状態が続く中で起きているのが、
長期国債利回りの大幅な上昇
です。
通常、国債利回りの上昇は、
- インフレ懸念
- 財政への不安
- 通貨への信認低下
を反映します。
つまり、
円で長期間お金を預けることに対する不安が、金利として表面化している
ということです。
円安だけでなく、
国債市場の動きも含めて見ると、
日本円の信任そのものが試されている局面
にあると言えます。
4. ペトロドル体制の揺らぎが意味するもの
ドルが世界の基軸通貨であり続けた大きな理由の一つが、
ペトロドル体制
です。
これは、
- 石油はドルでしか買えない
- 各国は石油購入のためにドルを保有する
という構造でした。
この仕組みがある限り、
ドルは「持たざるを得ない通貨」
だったわけです。
しかし近年、この前提が崩れ始めています。
- 石油取引でドル以外の通貨が使われる
- 二国間決済が増える
- 通貨バスケットや現物との交換が進む
これはドル崩壊を意味しませんが、
ドル一択という世界ではなくなった
という点が、極めて重要です。
5. 「金本位制復活」ではなく「信用の裏付け回帰」
誤解されがちですが、
世界が金本位制に完全に戻るわけではありません。
起きているのは、
- 通貨だけに依存しない
- 信用の裏付けとして金を組み込む
という バランスの変化です。
この動きを最もはっきり示しているのが、
中央銀行によるゴールドの継続的な購入
です。
中央銀行は短期の値動きで金を買っていません。
見ているのは、
最終的に信用が崩れたとき、何が残るか
その答えの一つとして、
ゴールドが選ばれ続けています。
6. シルバーは「戦略的資源」としての顔を持つ
シルバーがゴールドと同時に上昇している理由は、
金融的な連動だけではありません。
シルバーは近年、
- アメリカ
- 中国
の双方で 戦略的資源 と位置づけられています。
理由は明確です。
- 太陽光パネル
- EV・電池
- 半導体・電子部品
- 通信・軍事分野
これらの分野で、
代替しにくい工業用途が急増しているからです。
一方で、
- 新規鉱山開発は進みにくい
- 採掘コストは上昇
- 環境規制も厳しい
結果として、
需要が供給を恒常的に上回る状態
が続いています。
これは相場の思惑ではなく、
物理的な供給不足です。
7. ゴールドとシルバーが同時に選ばれる理由
整理すると、こうなります。
- ゴールド
→ 通貨や信用に依存しない「価値の保存」 - シルバー
→ 防衛資産でありながら、実需に支えられた「戦略物資」
つまり、
信用の不安 × 供給制約
この2つが同時に存在している。
だからこそ、
ゴールドとシルバーは同時に注目されています。
おわりに|これは強気な投資の話ではない
最後に、はっきり書いておきます。
ゴールドやシルバーを選ぶことは、
- 強気な投資
- リスクオン
- 一攫千金狙い
ではありません。
むしろ逆です。
通貨に全ベットしないという、防衛的な選択
実質金利がマイナスである限り、
ドルも円も、静かに価値を失っていきます。
その現実を前にして、
- 増やす
- 追いかける
のではなく、
守る・残す・分散する
という選択が、
世界的に増えている。
ゴールドとシルバーの上昇は、
その結果として表れているにすぎません。

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